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徹底解説:ECにおけるSEOや自動化、今後の検索領域に関する見解

deep insight a Q&A with Orit Mutznik on eCommerce SEO and the future of search

今回の記事は、現在インハウスSEOとして活躍している著名なSEO専門家への詳細なインタビューシリーズの記念すべき第1回目です。

当連載の第1回目となる今回は、急成長を遂げているファッションEC事業者の1つであるSilkfred社のSEO責任者Orit Mutznik氏をお迎えしてお送りします。

言うまでもなく、Orit氏はSEOコミュニティで非常に有名な方であり、定期的にSEO関連のポッドキャストやSEO業界のカンファレンスになどの場で、テクニカルSEOやEC向けのSEO、コンテンツマーケティング、自動化に関する膨大な知識や洞察、そして情熱を惜しみなくシェアしています。

Orit氏のSEOコンサルタントとしての経歴や、ECサイトのためのSEOを成功させる秘訣、SEOにおける自動化の議論、そして今後の検索領域の予測について、詳細は以下をお読みください。

早速始めましょう。
 

 

SEOの専門家になったきっかけを教えてください。

コンテンツマーケティングの側面からSEOの世界に入りました。私はコピーライティングと翻訳業務をバックグラウンドに持っていますが、IT業界での最初の仕事はギャンブル系事業者のコンテンツマネージャーとしてのポジションでした。これが私がはじめてSEOというものに携わった環境であり、SEOへの興味が段々増えていきました。SEO勉強を始めてSEO関連のコースを修了し、その後同じ会社でジュニアレベルのSEOとしての仕事に就きました。あとは私の経歴をご覧いただければと思います。これ以降、SilkfredのSEO責任者となるまで、私はあらゆるSEOのポジションを経験してきました。
 

 

ECサイトのSEOにおける最大の問題は何でしょうか?

ECでのSEOにおける最大の問題の1つは、コンテンツ重複です。これは、異なるページ間で同じ表現を使うという一見当然な作業でも発生する可能性があります。異なる商品ページ上のコンテンツ重複は、ECでは典型的な問題といえます。

また、商品ページのURLを変更することがあると思います。たいていの場合は、新しいURLだけでなく古いURLがまだ存在することが原因でコンテンツ重複が発生します。

ECサイトのいたるところにコンテンツ重複の問題が潜んでいます。中にはコンテンツをアップロードする人を教育することで解決できるものもあります。この方法で解決できないものについては、手作業での修正や、重複の発生を避けるためのルールの作成が必要となります。

もう1つの典型的な問題はサイト構造や構築方法にあります。ECサイトでは、階層や構造の中のフラットすぎず深すぎないちょうど良い範囲を見つけることが難しく、これはある程度長期的な課題として取り組んでいく必要があります。

また、クロール上の問題も課題になることがあります。広く知られている原因はJavaScriptです。これは私が昨年DeepCrawlのブログで公開したページネーションの調査と関連があります。Silkfred社では、ページ分割されたページ上に表示される商品をGoogleがクロールするのを妨害するJavaScriptの問題を大量に抱えていました。

上記の記事で言及したように、この問題の修正がSilkfred社にとってすばらしい結果につながったという経緯があり、これは間違いなく注力するべき問題といえます。
 

 

ECのグローバル対応についてはどうでしょうか?

グローバル対応も、膨大な工数のかかる作業となる場合があります。Silkfred社ではグローバル対応を始めたばかりですが、私は前職のeToro社で8言語対応から始めて24言語にまで展開した経験があります。

グローバル対応の鍵となるのは、適切な業務プロセスの構築です。業務を最初の段階から適切に行うことが重要なのであり、それには安定した技術インフラが必要ですし、適切なグローバル対応計画が欠かせません。hreflangの整理や翻訳の手配、適切なURL構造を作成し、すべてを網羅したと考えてしまうことがあるためです。そしてコードをリリースしてから、考えてもいなかった問題が大量にあることに気づくことになります。

例えば、ページネーションにhreflangを設定するかどうか。これは過去にAleyda Soils氏が教えてくれていた時に私が尋ねた質問です。Twitter上のSEOコミュニティやカンファレンスでは知識の共有が大量に行われているので、質問するのにもってこいの場所です。グローバルSEOに関してAleyda氏は絶対にフォローしておくべき存在です。私個人としても、彼女からとても多くのことを学びました。

前述の内容に話を戻しますが、考えられるすべてのことを綿密に計画して対応していくようにしなければなりません。可能であれば、まず1言語から始めてそこでの問題を見つけるのが良いでしょう。しっかりとしたグローバル化計画を構築し、その後それをブラッシュアップしていきましょう。私はこれがベストな戦略だと考えています。ただそれだけではなく、実際に業務を通じてより多くの知識を身につけることができるということを覚えておきましょう。

多くのSEO担当者が知っているように、グローバルSEOではうまくいかないことがたくさんあります。それでも、グローバル対応は面白く挑戦のしがいがある業務ですし、それから多くを学ぶことができます。
 

 

Core Web VitalsはECにどのような影響を与えるのでしょうか?

私が最近Twitterで共有したiProspect社が提供するCore Web Vitalsスコアツールによると、Core Web VitalsによりECやアパレル企業が難しい局面を迎えるようになるとされています。GoogleのCore Web Vitalsアップデートから恩恵を受けるのはUK単体でアパレルでは5%、ECでは20%のみであるとされています。しかし、それを見て諦めるべきではありません。

Core Web Vitalsの影響は、より広い範囲で、徐々に感じられるようになってくると私は考えています。GoogleはSEOコミュニティの切迫した懸念に対しては落ち着くように促しており、少なくともすぐにはそれほど大きい影響を及ぼさないと思います。

ただ、個人的には、Core Web Vitals対策を実行していくためにこのアップデートに関するトピックを最大限に活用しています。巷で予想しているほど大きな問題ではなさそうだとディベロッパーに伝えると、彼らはCore Web Vitals対策への開発を優先してくれないでしょう。

そうではなく、今後のGoogleのアップデートに向けた準備が必要で、確実にアップデート後の基準にマッチできるように修正を行っていく必要がある、というように伝えることで、首尾よく進めていくことが可能になります。

そうではなく、今後のGoogleのアップデートに向けた準備が必要で、確実にアップデート後の基準にマッチできるように修正を行っていく必要がある、というように伝えることで、首尾よく進めていくことが可能になります。
 

 

Core Web Vitalsに対するECやアパレルサイトの現在のパフォーマンスが非常に低いのはなぜでしょうか?

これは私がDeepCrawlのブログで公開したページネーションの調査によく似ていて、その調査ではECサイトの65%がユーザーフレンドリーなページネーションを行っていないことがわかっています。

それは、ECのSEO担当者がユーザーフレンドリーなページネーションを知らない、または考慮していないことが原因ではないと思います。もちろんこれ関してはさまざまな意見があり、依然としてページネーションをブロックするべきであると主張している人も残念ですが一定数存在します。しかし私が言いたいのは、ほとんどのECサイトは常に変更に対応できるわけではないということです。というのも、ECサイトの場合は変更が大規模に行われるものであり、そうした変更の実施がとても困難なためです。

6月に控えるCore Web Vitalsのアップデート対応を6月になる前に済ませておこうとしたものの、会社の優先順位が異なるためにそれができなかったSEO担当者はたくさんいることでしょう。結局、ECでのSEOの重要性は企業で異なります。それもパフォーマンスが低くなる原因の大きな要素だと思います。

諸所の理由で削除できないサードパーティスクリプトが数多くあるために、シンプルにCore Web Vitalsの改善ができない場合もあります。そのため、ただできることをして、それが十分な結果をもたらしてくれることを祈るしかありません。
 

 

どうすればECビジネスでSEOの優先順位を上げることができるでしょうか?

実は、このトピックに関して、BlueArray社が今後公開するインハウスSEOマスターブックに私が執筆した章があります。

端的にお答えすると、自社でSEOの優先順位を上げるためには、会社の異なる役割の人たちに対してSEOが身近で理解できるものにしなければなりません。SEO担当がそれを推進していく必要があります。そして、最も効果が大きくなるような小規模な変更を優先的に行うようにしましょう。

そして、小規模な変更しか行っていなくてもSEOは大きな効果をもたらすということを社内で説得しましょう。私であれば、主要なステークホルダーに対してだけでなく、変更に必要な開発を担うディベロッパーに対してもこうした説得を行うようにするでしょう。ディベロッパーに伝える際には、「皆さんのおかげでとても助かりました。しかも、会社にも貢献しています。」というように伝えて、彼らに主体的にSEO施策の実施に携わってもらうようにします。

こうすれば最初の一歩はとても小さなものだとしても、それより大きなインパクトを与えることが期待できる、はるかに大きなプロジェクトへの布石となるものです。
 

 

どうすればディベロッパーと腹を割って、SEO担当者がより良い関係を築けるのでしょうか?

SEO担当者はディベロッパーとの関係構築の重要性を軽視することがあります。私は最近Garrett Sussman氏とのポッドキャストに参加して、このトピックについて話しました。ディベロッパーとの関係をないがしろにするべきではありません。ディベロッパーは施策の実装を受動的に行うだけの存在ではなく、それぞれの独自の考えをもっています。そして彼らはSEOの技術面に関する多くの知識があるだけではなく、興味関心も持っています。

私はSilkfred社との面談において、さまざまなSEO施策のロードマップを提出しなくてはなりませんでした。私は経営陣向け、そして開発リーダー向けにもそれぞれロードマップを提出して、確実に認識を合わせられるようにしました。このロードマップは非常に技術的な内容で、開発リーダーに「ずっとこうした仕事の進め方を実現したかった」と言ってもらえました。今では彼らは「これにはSEO上の利点があります」というように話すことも多くなり、同じ方向を見て業務を進める事ができています。

ディベロッパーにヒアリングを行い、彼らの興味関心や彼らが実施するべきと考えていることを理解し、そして私の専門領域では彼らサポートしする形で様々なプロジェクトを行ってきました。

ただ、ここで重要なのはディベロッパーと話をすることに過ぎません。腹を割って議論を重ね、彼らのロードマップを理解し、そして何を重要に考えているのかを理解するだけで十分です。

同じ言語を使って話すこともまた重要なことです。同じ言語を使って話せば、自分たちが理解してもらえていると感じるので、こちらのことも理解してもらいやすくなります。

彼らが理解していないことを実行したい場合は、その影響をこちらから説明していく責任があります。曖昧な言葉を使うのではなく、理由の説明や背景となる情報の提供を彼らの言語で伝えていくようにしましょう。

そして、すべてを明確化、透明化するようにしましょう。悪意を持って接するのではなく、敬意を持って彼らに接してください。彼らのアイデアを聞き入れるようにしましょう。こうすることで、ディベロッパーがコードをリリースする前に私に伝えてくれるようにもなりました。

彼らに対して、SEOのパフォーマンスを妨げるかもしれないと思ったら伝えてほしいこと、そして問題が深刻化しないようにすぐに回答することをはじめから伝えていたため、ディベロッパーは「これはSEOの観点からみて大丈夫ですか?」というメッセージを送ってくれます。今では彼らは必ずそうした質問を受けて、私がそれに回答しているので、サイトに悪影響が及ぶこともなく良好な関係を築いています。
 

 

CMOやマーケティング責任者にSEOを理解してもらう一番の方法は何でしょうか?

これは、私がSilkfred社に入社した頃に行ったことの1つです。私はSilkfred社と似たSEO上の状況にあった企業の事例を紹介し、それらの企業が達成した結果を見せました。このようにSEOのポテンシャルを説明していくことで、SEOに理解の乏しい上層部にも納得してもらえます。

SEOに関してはリソースと開発工数の社内における優先順位で不利なポジショニングにあることが多く、最も大きな変化をもたらすものは何かという観点から考える必要があります。

SEOの価値に納得してもらうのは難しいことですが、不可能なことではありません。
 

 

ECサイトにおいてどのようにクロールバジェットを管理していますか?

クロールバジェットは、多くの大規模ECサイトにとっての課題です。特にフィルタが適用されたページなどに関しては数多くの問題があります。これは、私がSilkfred社にジョインしてすぐに取り掛かったことの1つです。

ECでは、クロールバジェットと会社のニーズの間で常に葛藤がうまれます。Googleは巨大なサイトのクロールが可能と主張しているため、そう大きな問題になることはありません。しかし、ECサイトの中にはこれまで私が管理してきたような規模よりも大きなものが存在することも理解しています。

私が解決できておらず、また未だに解決策があると思えないことの1つは、パラメータ付きのURLと日々格闘する有料広告チームに関してであり、その理由はこうしたURLが依然としてクロールされることが多いためです。残念ながら、こうしたURLをrobots.txtでブロックすることはできません。これらはrobots.txtが機能するのに必要な要素であるためです。

クロールバジェットの改善に役立つ問題点を見つけたら、できればそれを修正してください。事業の別の領域に影響を及ぼすために修正できないという場合は、うまくいくように願うほかありません。
 

 

今後のSEOはどうなると思いますか?

私は昨年からずっとPythonを学んでいることもあり、自動化が強い影響力を持つようになると思っています。こうした自動化トレンドは好ましい傾向だと思いますし、特に単調なSEO業務を自動化するスクリプトや記事などはすばらしいと思います。自動化は、間違いなくさらに身近なものとなっていくでしょう。

すでに、Pythonのスキルを要件としたSEOの求人広告をいくつも目にしたことがあります。Pythonは実際の業務に役に立つため、学習を検討するべきです。現在私が作ろうとしているものと似たような便利なツールを構築することもできます。自動化はさらに広く普及し、それにつれて自動化に関するコミュニティの共有ツールや便利なアイデアが増えていくはずです。これは、すべての人にとって有益なことです。

話が逸れますが、Googleはこれからも我々の頭を悩ませていくことでしょう。彼らはよりニッチな分野に注力し、SEO担当者はさらに知識をつけていくことが求められます。この例としては、確実にサイトやコンテンツを検索ユーザーの意図に一致させることが挙げられます。

私は最近、Suganthan Mohanadasan氏Andy Chadwick氏が開発した、検索意図の把握に役立つKeyword Insightsツールを実際に試させていただいたのですが、それこそがSEOの向かう先だと思いました。検索時のUXを最適化するだけでなく、検索意図の最適化に注力することが必要になります。これらはいずれも、今後の検索領域の大きな部分を占めることになるでしょう。
 

 

Python愛好家として、SEOタスクの自動化を検討しているSEOにどのようなアドバイスをしますか?

Pythonの最も大きな障壁となっているのは、必要以上にそれを恐れていることと、インポスター症候群だと思います。

私の場合がそうでした。残念ながらもう一緒に働いていないのですが、私はHamlet Batista氏からかなり刺激を受けました。私が仕事を始めて間もない頃、彼に「すごいですね、どうやってやるのですか?」と聞いた時、彼はあなたにもできますよと言ってくれました。私はそれができるとは思ってもみませんでした。しかし彼が励まし続けてくれたおかげで自信をつけることがでました。

ここから、私のPython学習が始まりました。試しにYouTubeの無料コースを開始して、 今では上級レベルのPython開発認定資格取得に取り組んでいます。次のステップとして、自分自身にも言い聞かせているのは、学習をやめて実行に移すことです。それにしても、Pythonを学ぶ価値は確実にあると思います。私は様々な開発に携わってきましたが、作ったものが実際に動いているところを見るのは、純粋にとても喜ばしいことです。

そのため、恐怖心を捨ててまずはやってみましょう。SEO業務の中のルーティン作業について考えてみてください。おそらく自動化で解決することができます。それに勝るポジティブな要素は他にありません。

まずは、他の人が書いたPythonのスクリプトを探して使うこともできます。世間ではPythonがたくさん使われていて、自分で使えるようなコードがそこら中に転がっていて、そしてElias Dabbas氏Charly Wargnier氏JC Chouinard氏Greg Bernhardt氏Koray Gübür氏のようにコードを書く専門家が大勢存在していて、皆コミュニティのために尽力しています。Pythonによるプログラムを理解できれば、他の人が作ったものを転用していくことができます。

Pythonの専門家になる必要はなく、基礎的な内容を知ることから始めれば良いのです。学べば学ぶほど自信がついてきます。非常に協力的なコミュニティがあるので、ただ恐れずにやってみればよい、というのが私のアドバイスです。

備考:インタビュー後、Orit氏は無償のPython効率化ツールであるG-Trendalyserを構築およびローンチしています。ぜひこちらからお試しください。(英文)
 

 

最後に、SEOコミュニティであまり目立たないインハウスSEOのリーダーにどのようなアドバイスをしますか?

SEOのTwitterに参加しましょう。会社に関する情報を必ず共有しなければならないというわけではありません。Brighton SEOは私の場合少し例外で、その承認を取る必要がありました。ですが、普段は日々の業務に直接関係する内容をシェアしていません。より幅広く、ECでのSEOやSEO全般に関する私の考えを幅広く共有しています。ミームやGIFも投稿しますが、突き詰めると自己表現そのものです。

自分の意見を届けるという点では、私は常にチームの中で働いてきましたし、ずっとSEOオタクだったと言えるでしょう。過去の職歴を振り返ってみても、私はSEOの最新情報を常にシェアしてきました。誰よりもそうした情報に敏感だったのは間違いありません。しかし、SEO関連のTwitterでは自分をありのままに表現することができるのでとても心地よいと思っています。SEOまわりのツイートを開始するまでは、自己表現の場がありませんでした。

質問への回答に話を戻しますが、自分の知識を共有すれば必ず居場所が見つかります。例えばECブランドのインハウスSEOとして働いているなら、他のECサイトのSEO担当者が課題に感じることについて、あなたの考えや洞察を共有してみてはいかがでしょうか。自分の知識を活用して、ツールを作成し、そしてそれをコミュニティで共有してみてください。

あなたの話は興味深いですし、人々はあなたの言うことに関心を持っています。Pythonに関してお話したように、恐れず行動することを意識しましょう。